親の実家を相続して空き家のまま放置しているケースは少なくない。家を取り壊して更地にすると税金が跳ね上がるので、空き家にしておきたくなるのも仕方がないだろう。だが、最近の法改正で事情が変わり、放置しておくと負担が重くなるリスクが高まっているのだ。
空き家の4割は利用目的のない「放置空き家」が占める
全国の住宅のうち1割以上が空き家になっている
今、全国的に大きな問題として注目されているのが「空き家」だ。総務省の調査によると、全国の空き家数は900万戸と過去最多となり、5年前と比べて51万戸増加。総住宅数に占める空き家率は13.8%に達している。

さらに問題なのは、空き家のうち「賃貸・売却用や二次的住宅(別荘など)を除く空き家」、つまり住む人がおらず放置されている空き家が385万戸と4割強にのぼることだ。都道府県別では大阪府が22.7万戸、東京都が21.5万戸など、大都市圏ほど多い。

家を取り壊して更地にすると固定資産税がアップする
こうした「放置空き家」が増加している要因としては、親の死亡や施設への入居などで実家が空き家になるケースが多くなっていることが挙げられる。兄弟など相続人が複数いる場合は遺産分割協議が進まずに処分が長引くケースも少なくない。
一戸建ての場合は建物を取り壊して更地にすると固定資産税が高くなってしまうという問題もある。つまり住む人がいなくなっても、空き家のまま放置しておくのが保有コストを抑える最善の策とされていたわけだ。
だが、空き家の増加が社会問題化していることに対応し、行政もここ数年で対策を打ち出している。すなわち、「管理不全空き家への増税」「相続登記の義務化」「相続空き家の売却減税」の3つだ。これらの空き家対策への対応を怠ると、思わぬペナルティを被ることにもなりかねないので注意が必要だ。
管理が行き届かない空き家は固定資産税が増額に

周囲に悪影響がおよぶ空き家を「特定空家」に認定
空き家が長年にわたり放置されると、壁が崩れたり、最悪の場合は倒壊する恐れもある。また、敷地内にゴミが不法投棄されたり、小動物が住み着いたりするケースもあるだろう。
そこで国では2015年5月に「空家等対策特別措置法」を施行。倒壊のおそれのある空き家や、著しく衛生上有害な状態の空き家を自治体が「特定空家」に認定し、改善のための指導や勧告、命令などができるようにした。指導に従わず勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が受けられなくなる。
勧告を受けると固定資産税が最大4.2倍に
さらに2023年12月には、放置すると特定空家になるおそれのある空き家を「管理不全空家」とし、自治体が指導できるように法律を改正した。この管理不全空家に認定された場合も、指導に従わず勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が受けられなくなる。
固定資産税の住宅用地特例とは、税額を計算する際の土地の評価額が広さに応じて最大6分の1に軽減されるというもの。住宅が建っている土地は、更地の場合に比べて固定資産税(と都市計画税)が大幅に安くなるのだ。

この特例が受けられないと、評価額が最大6倍にアップする。実際には課税の段階で評価額が0.7倍に負担調整されるので、税額は最大4.2倍となる。
相続から3年以内の登記が義務化された

登記せず放置された家は所有者不明になるケースも
空き家対策の第2弾は相続登記の義務化だ。相続登記とは、土地や建物を相続した人が所有権の移転登記を行うこと。義務化される以前は実家を相続しても移転登記をせず、放置空き家となる事例が増加していたのだ。登記情報が古いままの場合は所有者が不明になり、行政が所有者を探すのに時間と費用を費やすケースも少なくなかった。
そこで2024年4月から相続登記が義務化され、相続したことを知った日から3年以内に移転登記をしなければならなくなった。義務化の前に相続した場合も、2027年3月末までに登記する必要がある。
相続登記をしないと10万円以下の過料が科される場合も
もし正当な理由なく義務に違反した場合、10万円以下の過料が科される可能性がある。正当な理由とは、例えば相続人が極めて多く調査などに時間がかかる場合や、相続人が重病である場合などだ。
相続した空き家の売却益は3000万円まで税金がかからない
通常は20〜40%かかる税金が特例でゼロに
相続した空き家を放置せずに売却すれば、買った人が利用することで放置空き家化を防ぐことができる。そこで導入されているのが「空き家の譲渡所得の3000万円特別控除」だ。
この制度は相続した空き家を売却する際に、売却益(譲渡所得)から3000万円を控除できるというもの。不動産の売却には通常、20〜40%程度の高い所得税がかかるが、この制度の適用を受ければ3000万円までの譲渡所得には税金がかからないので大幅な減税となる。
相続の開始から3年目までに売却する必要がある
ただし、制度の適用を受けるには主に以下の要件を満たす必要がある。
・相続開始日から3年目の年の12月31日までに売却すること
・売却時まで、または売却した翌年2月15日までに家屋の耐震改修または解体工事を行うこと
・売却代金が1億円以下であること
ポイントになるのは相続した3年目の年末までに売却する必要がある点だ。相続した後に空き家を放置し、期限を過ぎてから売却すると、多額の所得税や住民税がかかることになりかねない。なお、この特例の適用期限は2027年12月31日までとなっているが、今後の税制改正で延長される可能性がある。
このように、相続した実家を空き家のまま放置しておくと、多額の税金がかかったり、ペナルティを科せられるリスクがある。その実家に自分が住むのであれば問題ないが、そうでなければ実家をどのように処分するのか、専門家などに相談してなるべく早く方針を決めるのが得策だろう。